平成29年 発達障がい(自閉症スペクトラム・ADHD・LDなど)を持つ人のライフステージに合わせた支援の充実を求める要望書2017.11.21 (Tue)
広島市長 松井一實様
広島市教育委員会教育長 糸山 隆様
クローバーの会(発達障がい児を持つ親の会) 代 表 村 主 裕 子
(1)医療・療育について
1、早期発見のために
- 5歳児検診を「健診漏れ・発見漏れ・対応漏れ」がないよう、完全実施してください。
- 全ての対象者が健診を受けられるシステムを作ってください。
- そのために、全対象者へのはがき発送 → 未受診者に対する次回健診の通知と希望日の選択 → 再未受診者への訪問聞き取り → ハイリスク児の専門医受診 を確実に行ってください。
- 集団遊びの観察だけでは発見漏れの可能性が高いことから、以下の項目をスクリーニング方法や保護者へのアンケート内容に加え、実施することをご検討ください。言語発達チェック・・・上位概念の形成、しりとり、反対語、運動発達チェック・・・片足跳び、スキップ、片足立ち、じゃんけん、聞く力のチェック・・・集団聴力検査、短い話を聞いて道順を書く、または質問に答える描画チェック ・・・人物画(首・肩・指の数の有無のチェック)
- 保健師を増員し、健診で発見された発達障がいを持つ子やハイリスク児の保護者を必ず医療・療育機関に結びつけ、心配事や悩み事の相談にのりながら、障がい受容の支援や保護者の精神的自立を支援するなどの適切な対応を行ってください。また、発達障がい児が小学校に入学するまでの期間の療育支援や教育支援などのトータル・コーディネーションを担ってください。これらを可能とするために、保健師対象の発達障がいに関する専門性向上を目的とした研修を実施してください。
2、発達障がいの診断が出来る医療機関の整備・充実を
- 広島市子ども療育センターは、医療機関にふさわしい施設・設備を整えてください。
- MRIなどの設置、専門医・スタッフ(耳鼻咽喉科の常駐、レントゲン技師など)を配置してください。
- 電子カルテ化、個人ファイル作成など情報の共有と管理をしてください。
- 西部療育センター・北部療育センターに発達障がいの専門医(小児科医・精神科医)を配置し、MRIなどの機器の設置や作業療法士・言語聴覚士の増員をするなど、広島市子ども療育センター規模の医療機関にしてください。
- 初診待ち・診察待ちを1か月以内にできるよう、集団診察体制を取ってください。
- 広島市立病院に、発達障がいの診断と治療を行う診療科を設置してください。併せて療育や社会復帰のための訓練を行う部署も併設してください。
- 子ども病院を新設してください。
- 小児科だけでなく、小児精神科あるいは児童精神科を設置し、発達障がいの診断・療育が出来る子ども病院を新設してください。
- 広島市も、発達障がい専門医の育成に取り組んでください。
- 広島市子ども療育センターで、専門医の育成を行ってください。
- 小児科医・精神科医合同の研修会を実施してください。
(2)教育について
1、一人ひとりの子どもに適した療育・教育支援を実施できるために
- 発達障がいの発見後、全ての子が必要に応じ、一貫した療育・教育を受けられるよう、アセスメントを行い、適切な支援体制をプロデュースする専門相談員を設け、それに、医師や臨床心理士・ST・OTなどの専門家が関わるシステムを作ってください。
- 教育段階に入った発達障がいを持つ子どもに対して、それぞれのケースを担当する専門相談員を置き、幼稚園入学以降大学卒業まで、必要な療育や特別な支援を行ってください。
- 個々のケースについて個人ファイルを作り、専門家が記述を行い、進学に伴う学校の変更などに対処できる一貫した支援を行ってください。
- 専門相談員は、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、通級指導教室担当者、特別支援教育コーディネーターなど、現在の職種から専門的資質を持った人を育成してください。
- 専門相談員が必要に応じて、該当児の関係者を一堂に集めたケース会議を開くことができるようにしてください。
- 通級指導教室(幼児対象~高校生まで)を各校に設置してください。
- 幼児対象の通級指導教室を早急に設置してください。
- 義務教育段階の通級指導教室は、各校に設置することを基本とし、設置できるまでは巡回指導を行ってください。
- 高校への通級指導教室は、各校に設置することを基本とし、それまでは、特定の学校ではなく、広く利用できる場所に設置し、巡回指導を行ってください。
- 各学校内に、発達障がいを持つ児童生徒のための相談機関を作ってください。
- 子どもの特性を理解し、子どもの悩みや困り感に寄り添うカウンセリングが出来る人を、各校に配置してください。
- 発達障がいの告知を受けた子どもが、告知後、自分の障がいを受容するための受容支援教育を実施してください。中学校・高校における通級指導教室も含め、どこで行うかを早急に検討してください。学校教育として取り組むことが望ましいと思われますが、その時は必ず医療機関との連携を行ってください。
- 教職員の方の研修を十分に行ってください。
- 新任者研修では、発達障がい理解研修にとどまらず、発達障がい児の思いや困り感や合理的配慮の具体例や保護者との連携等、細部にわたるカリキュラムを実施してください。
- 全ての教員対象に、発達障がいの特性理解の研修にとどまらず、「合理的配慮」の具体例やその実施方法についての研修を行ってください。
2、不登校・引きこもり対策の大幅な前進のために
- 各校に、専門員(スクールカウンセラー・ソーシャルスクールワーカーなどの活用)を配置し、学校や社会に復帰するケースか独自の進路を考えるケースかを見極めて、専門的対応を行ってください。公立校か否かに関係なく、該当する全ての子どもを対象としてください。
- 学校への復帰を目指す場合は、次のことを行ってください。
- ふれあい広場は教室に格上げし、独立した1教室で、担当教諭を配置してください。
- 開設時間は授業開始時間から勤務時間終了までとし、ゆったりしたカリキュラムで、学習の保障はもちろん、療育やカウンセリング等を実施してください。
- 独自の進路を目指す場合は、次のことを行ってください。
- 各区に、明るく清潔で気軽に入れる場所に、ふれあい教室を設置してください。
- 医療や福祉等との連携を図り、おのおののケースに合わせた支援計画を作成し、経済的自立が出来るまで、一貫した支援を行ってください。
- 高卒認定を受けられるように、学習支援を行ってください。
- 小学校から高校までを対象とした不登校対象校を新設し、特性やニーズにあった働き方や就労の確保など、社会的経済的自立を目指した教育を進めてください。
- 引きこもりの場合は、次のことを行ってください。
- アウトリーチの担当者の確保に努め、専門性向上の研修の実施を行ってください。
- 社会との接点を持つ場を、教育段階ではふれあい教室に、社会人の場合は、広島市精神保健相談センターや発達障がい者支援センター内に確保してください。
(3)生活に関して
1、放課後や休日の豊かな生活のために
- 放課後等ディサービスの質の向上を図るために、実態調査や巡回指導及び研修をこまめに実施してください。
- 担当課内に専門相談員を配置し、個別性に配慮した支援や、やや長期的な視点に立ったアセスメントを提供できる支援計画の立案などについて巡回指導を行ったり、「福祉サービス第三者評価」の役割を担ったりすることで、全ての放課後等ディサービス事業所のレベルアップを図ってください。
- 専門相談員は、教育期間内の個々の発達障がい児の支援計画を立案・プロデュースする専門相談員が行えるよう、担当部局と教育委員会は、横のつながりを強化してください。
- 放課後等ディサービス事業所の一覧表は、子育てのため、実際に事業所を回って探すことができにくい保護者の実情を踏まえ、療育の様子や指導者等の写真を掲載したり、療育の取り組みの内容を盛り込んだりした詳しい事業所紹介一覧を作ってください。
- ADHDなど行動面で多動が見られる児童を多く抱えている場合は、職員の人員配置基準を緩和し増員が認められるように、国に働きかけてください。また、実現を待つまでもなく、広島市独自の措置を行ってください。
- LDの子どもへの対応などができる学習指導員の配置を認めてください。
2、日常生活における、発達障がいを起因として起こるさまざまな課題に
対するきめ細かな支援のために
- 当事者・家族支援を充実させ、家族の精神的負担の軽減を図ってください。
- 家庭内暴力などから身を守ったり気分転換を図ったりするための、家族のレスパイト(一時的休息)を提供してください。
- 兄弟・家族の心理的なサポート体制を確立してください。そのための相談機関を整備してください。
- 発達障がいを起因とするDV・虐待・家庭内暴力の相談機関を発達障がい者支援センター内に設け、臨床心理士や精神保健福祉士、社会福祉士など、必要な専門職種をそろえてください。
- 通報による家庭訪問や外部での対応が出来るようにしてください。また、民間の機関を助成するとともに、新たな民間機関を育成する取り組みを行ってください。そして、臨床心理士の専門性を高める研修を実施してください。最初の相談機関は多様でも、支援はワンストップで受けられるようなシステムにしてください。
- 欝や統合失調症などの精神疾患を併発した発達障がい者に対して、治療を兼ねた生活体験や就労体験が出来る場を整備し増やしてください。
- 子育て支援・当事者支援のために、発達障がいに関する情報を一箇所にまとめ、広島市のHPのトップページから簡単にアクセスできるようにしてください。
- 発達障がいに関する全ての事柄が一度に一目で分かるよう、ライフサイクル全ての情報提供をまとめた「サポートファイル」の作成を行ってください。
- その中に、発達障がいに関する全ての情報にとどまらず、以下のような関係機関の全リストを含めてください。・医療機関・療育機関の一覧表・発達障がいに関する相談機関の一覧表(大学・個人経営も含め)・引きこもりセンター・生活就労支援センターなど関連機関の一覧表・放課後等ディサービス事業所・児童発達支援事業所・児童発達支援センターの 一覧表
・通級指導教室設置校・設置教室一覧表・就労支援事業所・ハローワーク一覧表
- ・親や当事者の会の名称・所在地・連絡先の一覧表 など
- 発達障がいに対する正しい理解や接し方を、広島市民に広く啓発してください。
- 当事者や家族でなくても、発達障がいに関する相談(近所や職場の人の困り事や悩み相談が出来る)機関を広く広報してください。
- 発達障がいの啓発のために、発達障がいを持つ人との接し方やコミュニケーションのとり方などについて、「市民と市政」などをつかって、広く広報してください
- 発達障がいを持つ人に対する「合理的配慮」の具体例や取り組み方についても、「市民と市政」などをつかって、広く広報してください
(4)就労に関して
1、発達障がい者の雇用率を上げるための取り組みと発達障がい者が安心
して働ける環境の整備のために
- 平成30年度から実施される精神障がい者の雇用義務化に伴い、広島市の企業に対して、理解促進を図る取り組みを行ってください。
- 企業が発達障がい者を雇用する際の不安や心配事を具体的に把握し、それに応えて、どのように対処し、どのような支援を具体的に行えば、雇用し続けることができ、成果を得ることが出来るのかといった内容や、上手く成果を上げている企業例の紹介などの研修を、複数回実施してください。
- 発達障がい専門のジョブコーチを、当初は各区に一人ずつ配置できるようにしてください。
- 広島市職員の採用に際して、発達障がい者雇用枠を設けてください。
- 広島市が率先して、発達障がいの特性を生かせる職種の開拓に取り組み、発達障がい者の雇用を実現することで、雇用拡大への道を作ってください。
2、すぐ就労に結びつかない発達障がい者に、就労に向けた支援や生活支
援が出来る場の確保のために
- 後期中等教育及び高等教育を終了したにもかかわらず、就労が決まらなかったり短期間で失業したりした発達障がい者に対して、就労プログラムを作りトータルコーディネートできる専門相談員を配置し、グループホームなどの宿泊施設や作業所的な就労支援機関、お金や公共交通機関の使い方や生活自立に向けた取り組みが出来る場を整備してください。
- 発達障がい者支援センターは、就労支援施設や生活支援施設が併設できるよう、社会福祉事業団委託ではなく、市の直営にしてください。
- ソーシャルスクールワーカーを大幅に増員し、専門相談員の役割を担わせてください。
(5)行政について
1、切れ目ないライフステージにおける支援を可能とする発達障がい施策
の円滑な実施のために、
- ライフステージにおける切れ目ない支援を可能とする発達障がい施策の円滑な実施のために、子ども未来局や健康福祉局などの各部局、及び教育委員会を統括する組織を作ってください。
- 出来るだけ早い時期に、副市長を責任者とした各部書を統括する機関の設置をし、各部局
の範疇を越える発達障がいの課題について取り組む包括的なシステムを作ってください。
- 常に、教育委員会と共同の取り組みを行えるよう、包括的なシステムの中に、教育委員会 を含めてください。
- 広島経済界や大学などの研究機関との産学官一体となった組織を作り、発達障がいを持つ精神障がい者就労を進めるための社会的雇用モデル事業を行ってください。
- ライフステージにおける切れ目ない支援を進めていただくために、親の会などが要望を届ける窓口を、子ども未来局あるいは健康福祉局にしてください。
1.クローバーの会と広島市及び市教育委員会との要望を届ける窓口は、教育委員会
ではなく、以前の子ども未来局か、あるいは、健康福祉局にしてください。